イオンモールの産直がオープンから13年目で撤退を決断
今回、取り上げるのは「産直(産地直送)」。
現在では、全国に道の駅が設置され、農産物直売所などと地元で取れた野菜を農家の人が直接陳列する店舗のイメージが強いですね。そんな「産直」ですが、消費者からすると新鮮な野菜や果物が手頃な値段で購入できるということで一度は利用してことがある方も多いはず。
そんな「産直」ですが、流通大手のイオンが展開する商業施設「イオンモール」でも様々なところで出店しています。
今回は、イオンモール盛岡南(岩手県盛岡市)の産直。
2019年9月2日、イオンモール盛岡南で産直を運営していた遠野市の第三セクター「遠野ふるさと公社」がアンテナショップである「結いの市」を2020年2月末で産直を撤退することを決めました。
商業施設の産直が赤字続きで店舗の撤退を決断
イオンモール盛岡南は、盛岡駅より車で南に10分という場所にある。
ちなみに盛岡市内には、イオンが展開する大型商業施設が2ヶ所。イオンモール盛岡南とイオンモール盛岡が立地する。さらにこの2つのイオンモールは車で10分という近距離にある全国でも珍しいタイプです。
今回は、「イオンモール盛岡南 結いの市」。
「イオンモール盛岡南 結いの市」を運営していた遠野ふるさと公社は、2006年9月15日にイオンモール盛岡南が開業した当初から出店を続けてきた産直のお店。しかし、報道されたニュースによれば開業以来13年連続の赤字。
その結果、契約期間満了で撤退を決断したのです。
「イオンモール盛岡南 結いの市」は、地場産品の年間売上が7千万を超えていた。(岩手日報)
「イオンモール盛岡南 結いの市」では、毎日入荷する新鮮な野菜や乳製品など遠野を代表する産品を品揃え。
店舗内には観光のパンフレットなどを設置するなど観光情報を発信する基地としての役割も果たしていました。遠野市などの観光情報発信も担う「結いの市」の撤退は、地元経済に与える影響は少なからずあるでしょう。さらに産直へ商品を出荷していた生産者からは販路の開拓を求める声も上がっているそうです。
遠野ふるさと公社によると、「結いの市」の契約期間満了に伴う撤退はイオンと合意済み。
「イオンモール盛岡南 結いの市」は、専門店街でも集客力がある反面、商品単価の低さが目立ち経営面では苦戦が続き、2018年決算での累積赤字はおよそ9千万。
開業以来13年連続の赤字となれば、年間700万前後の赤字を出していたということになるでしょう。
つまり、毎月▲60万。
単純に計算すると野菜や果物の利益率10%〜15%前後とした場合、60万の赤字をカバーするために必要な売上高は600万ほど。年間予算で7200万くらいの売上高は必要だったはずです。
経営者とすれば、売上1億4千万は欲しい。
今回の産直撤退は、少し遅かったと判断が出来るのではないでしょうか。
第三セクターが運営する産直も経営が厳しく撤退している
産直の撤退は商業施設に限りません。
第三セクターが運営する産直も同様です。
滋賀県長浜市「えきまちテラス長浜」は、2019年4月25日で「産直市場えきまちマルシェ」を閉店することを発表しています。マルシェは、JR長浜駅東口再開発ビルの1階に店舗を構えていました。
2017年7月オープンし、2018年4月に商品の品揃えを一新させるも、売上不振。
年間およそ4千万の赤字。
第三セクターの社長は、「大幅な赤字圧縮という目標が達成出来なかった」と述べており、「産直市場えきまちマルシェ」のパート従業員を全員解雇。地方の産直はさらに厳しい環境に置かれていることが伺えるのです。
そもそも「産直」が赤字続きで儲からない理由とは
「産直」が赤字で儲からないという理由。
それは、そもそも事業構造を見てみればわかります。
「東洋経済」によれば、下記のようになっています。
道の駅は基本的に、自治体が事業主体となって、施設そのものは税金によって開発されています。作った施設を指定管理制度を活用した第3セクターなどに任せて経営してもらうというモデルが主流です。もし、普通に民間が事業として施設を開発するならば、施設整備の初期投資部分の回収も含めて、施設運営の売上から捻出するのが常識です。しかし、道の駅のほとんどは、初期投資は税金で作られています。
産直は、自治体が主体。
その結果、商売という意識や儲からなくても大丈夫と考えている可能性もあるでしょう。
例えば、売り場を見て思う感想は、「商売を本格的にやってる産直」と「売れればいいなという産直」。全国を回っていると両極端な産直が多いのです。売り場作りを教えてくれるプロがいたら売上が上がるのに。そう思うことが多々あります。
結局、第3セクターが運営しているから赤字が続くという訳ではなく、
- 売上を上げる工夫をする
- 商品を改善する
- 消費者が求めるものを作る
- 経費などの無駄をなくす
など本来なら改善するべき手を打つ。
という商売という根本が感じられない。もっと努力をするべき。ただ商品を置いてるだけだから売れない。良い商品があるのに目標設定が見えないし、売り方を変えたらもっと売れるのに残念な産直が多いのが現実でしょう。
店長をやったことがあればわかるはず。
本来出来るはずの目標や達成が見えなくなり、利益が確保できず赤字続きになるのでしょう。
まとめ
産直が赤字になる理由。
それは赤字に結果的になってしまってる。そう感じています。
産直を再生すること。
それは出来ると思います。絶対に難しいことではありません。小売業や店長を経験したことがある人が一人でもいれば、どこの産直でも変わるでしょう。
- 商品を売った成功体験
- 商品を売るための売り場作り
- 季節の感じる売り場変更
ちょっとしたことが出来れば変わります。
赤字になってしまうのは、産直が悪い訳ではありませんし、道の駅が悪い訳でもありません。
ちゃんとビジネスとして商売すること。
- 店舗を経営しているか?
- 赤字が続く原因は何か?
- 赤字を解消するためには何をするか?
客観的に判断し、出店前に計画した数字の指標と現状の指標をしっかりと照らし合わせ、数字を変えていく!という判断ができれば期限を設定して店舗をどんどん変えていく。数字を変えることが難しいと判断すれば、マイナスが大きくならないうちに撤退する。
そういう経営判断も必要でしょう。
それでは、また。